サザンオールスターズの「慕情」という曲が好きだ。
もんのすごく。
なにそれ、知らね という人も多かろうと思う。
何しろ20年以上も前のアルバムの、シングルカットされてない曲なのだから。
(もちろんファンの方なら名曲の一つに挙げる人も多いと思う。
そして20年経過していることにちょっと引いてしまう人も多いと思う。)
「世に万葉の花が咲くなり」というアルバムに収録された
このしっとりと聴かせるラブバラード。
ゆっくり時を刻むようなリズム、寂しくも心地よいメロディに、
そして深く静かな海に漂うような、悲しい、美しい歌詞が添えられている。
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慕情、無情、
桑田佳祐氏の曲にはよく「情」が登場する。
音として使いやすく、また憂い悲しみ後悔といった
「やりきれなさ」みたいなものがテーマになることが多い
桑田氏の世界観をうまく体現するキーワードなのであろう。
「慕情」には、この二語とも歌詞中に登場し、
匂い立つほど「ブルーな桑田佳祐」の魅力が詰まった曲なのだ。
この曲にはもうひとつ、
「むせぶ」というあまり聞き慣れない言葉が登場する。
調べると、「むせる」と同義のようだ。
変なところに入っちゃってゴホゴホする感じ。
「むせぶ」
しかし「むせぶ」には
「こみ上げる感情で息が詰まる」という意もあり
「慕情」での意味はこちらになるだろう。
「慕情」の歌詞冒頭は、
未だ過去を引きずり、前に進めずにいる男の無情が、
限りなく美しく表現された名シーンである。
少し自分なりに解釈したので紹介したい。
*
淡く霞んだ過去が霧のベールのように自分を包み、
思わずこみ上げる、あの頃の慕い想う気持ち。
虚しく水に投げられた小石のように
過去は心に水文をつくり、止めどなく流れる川のような涙となる。
*
日本語はどこまでも美しくなれる。
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